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古染付という典雅なネーミングは我が国の茶人の素晴らしい発想であるといつも感心させられています。唐物崇拝は当たり前にあったでしょうが、その中で彼の地に注文を出してうつわを拵えさせたり、中国の別の用途のうつわを見立てて茶の道具として取り入れたりと、自由自在、融通無碍の大胆アレンジの趣向で茶席のお客さんを愉しませてきました。
このうつわはコオロギを入れて鳴き声を競わせたり、時には闘鶏のように闘わせて愉しんだ虫を入れた器です。ですからこの蓋の穴の部分にも釉薬が掛かっています。つくづくいろんなことを考える民族だな~とこちらも感心させられてしまいますね。明代にその習慣があったのかどうか、もしくは清朝期の風俗に合わせて後代に見立てられたのかもしれませんが、なにしろ古様な虫食い、染付のベースの上に赤と緑の釉薬が上絵として配され、いい風情に一役買っていますね。手のひらの上に乗るような小さなものでもそこには濃縮された豊饒な世界が詰まっています。
穴を煙出しとして香炉はどうでしょうか。それとも小さなおとしを置いて香油を入れて香りを愉しむというのも面白いかと。古染付のお好きな方はコレクターズアイテムとしてもぜひお手許に置いて頂きたいと思います。
高さ6.0センチ 横8.5センチ
明時代末期
新しく誂えた桐箱に収められています。
蓋に削げと金繕いがあります。身の方には、蓋合わせ部分に成形した時に土が足りなくなって焼縮み、小さな穴が開いた部分がありました。これは成形時のものなので疵に入れなくともいいでしょう。また蓋にも身にもエッジの部分は釉剥けがありますが、こちらも古染付に限っては疵にならないものです。
御売約ありがとうございます。 |
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