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根来の魅力はさんざん語られてきたことなので今さら申し上げることもないのですが、その大きな柱は経年変化の美ということでしょうか。
長い年月、数知れない人の手で撫でられ擦られ、時には乱暴に扱われたかもしれませんね、そんなこんなで表面の朱漆が擦れてきたり、味が染み込んでいたりと、堅牢な日本の漆だからこそ表れるものじゃないでしょうか。
この椿皿と呼ばれるうつわ、もともと数十客単位で寺院などに伝来してきたものと思いますが、いつのまにか離されてこの五客、しかも同じ器形で壊れたら追加補充をしたようで、この五客でも多少時代感が変わるものが混じっています。
しかし塔頭を表わす高台内の印は同じ「三」というのが漆で入っていますので、やはり上記のように追加補充をしたようですね。また幾枚かには釘彫りで「大雲」と、これも使用者の限定の意味なのか、あるいは塔頭名なのかわかりませんが、入っています。
江戸や明治になっても同じ器形で作ってはいますが、高台が低くそれが撥状に外側に開く一文字様の形は古格のあるもの、桃山から江戸時代前期頃の生まれと考えます。
漆器の、特に根来というジャンルの入門編のような椿皿ですが、もっとたくさんの方にこの世界にハマってもらいたいなと切に願っています。
口径14.2~14.4センチ 高さ2.6センチ (大きさはそれぞれ微妙に異なります。)
桐箱に収められています。
擦れ、剥落、打痕などがそれぞれにありますが、虫食いなどで荒れたところはありませんし、コンディションは良好と云えます。
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