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古陶磁のなかで昨今の酒器の人気というのはすごいものがありますね、たしかに昔からお茶の世界でもお酒を呑んでもらうシーンがあり、名品の酒器はものすごく高価ではあったわけですが・・。しかしそんな酒器を手に入れるのは至難の業、名家伝世のものはまず出てくることがありません。
そこでと云うか、そんな事とはまったく離れて自由な眼で酒器を探せば、名品ならずとも愉しいものがたくさん見つかることに気が付かれると思います。見立ての妙、というやつですね。
これもそんな範疇に入るでしょうか、新羅時代のカップ形土器です。カップの取っ手部分が取れてしまってまったくの筒形になってしまいました。意図的に取ったわけではなく、接合部分に空気が入ったので窯の中で取れたという感じですね。発掘の土サビが取れた部分にも付いていましたのでね。
さてそうなれば普通は不良品であるわけで、「なんだ疵物か!」と一顧だにされないのでしょうが、この取っ手が無くなったおかげで握りやすい純粋な筒になった、とおっしゃる向きもおられましょう。これこそ見立ての面白さでありますよ。
裾がすぼまる自然なフォルムで口縁下に胴紐状に2本の刻線が浮き上がっています。さすがに新羅の陶工たちは技術が高く、エッジが立ってシャープなイメージです。滑り止めのようにピタッと手に馴染みますね、これは。
見込みにはほんの少しですが自然釉の溜まりが、お酒を注いだときのアクセントになりますね。
きれいな包布と風呂敷にくるまれて、持って出かけたくなりますよね!馴染みの居酒屋のカウンターで出して、ちょっとだけ得意げに一杯やるというのはとっても愉しいものですよ。でもそこはほどほどに、自慢し過ぎてお店に嫌がられても弊店は責任を持ちませんよ。
口径7.1センチ 高さ7.1センチ
統一新羅時代
新しい杉箱に収められています。
文中にあるように取っ手が欠損しています。またこの手にありがちな土臭は煮沸で取れました。もともと高温で焼しめられていますし、土器と云っても炻器のような焼締め陶なので問題なくお酒にお使い頂けます。
御売約ありがとうございます。
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