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朝鮮陶磁のなかで堅手と呼ばれるものの多様さはちょっと一言では表せない程ですね。他の粉引や三島などのようにはっきりとした定義付けが為されていない、技法上の分類が曖昧であることから、(もちろんお茶方ではやかましい約束があると思いますが・・)ぼんやりとあれもこれも堅手と呼ぶような風潮が昔からあるように思います。
とは云え多くのお茶わんが名付けられた桃山から江戸時代には、今日ほど多彩なものがあるわけもなく、後世に多くの朝鮮ものが舶載されたときに分類に困って柔らか手というような言葉も生まれているかと思います。しかしあまりその言葉ばかりにこだわり過ぎると、大切な本質がおろそかになりがちです。
くどくどと前置きが長いですが、要するにそのフォルムや質感など、素のうつわの本質を見つめて
ご自身が愛着が持てるかどうか、ということなのだと思います。古陶磁を自慢するのもいろんな愉しみ方ということで有りとは思いますが、ご自分がそのうつわと向き合って毎日少しばかりの好きなお酒をただただ愉しむ、と云うのが私としては大いにありですよ~と声を大にして云いたい。
肝心のうつわですが、全体がアイボリーホワイトのいかにも柔らかな色味、一見すると粉引の盃かな!と思わせますね。しかし畳付を見れば白い陶土を使っているのがすぐにわかります。器形としては比較的よく見られる端反りになったお皿の生まれのもの、しかし見込みに出来た鏡、茶碗でいうところの茶溜まりがグリっと深く、更に器形全体が深く出来ているので、酒盃として好ましい形になっています。
表面を覆う釉薬は滑らかに融けているのですが厚くなく、またあまり高い焼成温度ではなかったので、これが粉引のような柔らかな質感を産んでいるのでしょう。ムラムラと表面の釉は碧く融けているところもあり、またピンホールが出来ていてそこに酒が随分たっぷりと染み込んでいます。
穴や貫入に染み込んだお酒は更にこの酒盃を育てていきそうですね。これ以上はまた新しい方のお手許で大切に育てていって、もっといい表情を磨き出して頂ければと思います。(ただしお酒に漬けてほったらかし、なんていうのはダメですよ)
気に入った酒器で頂くお酒は何よりのくすり、憂いの玉箒のうつわとしてお勧めしたいと思います。
口径10.4~10.6センチ 高さ4.8~5.0センチ
朝鮮時代前期
新しいものですが杉箱に収められています。風呂敷と柔らかい糸味の包布も添っています。
口縁からY字状にニュウがあります。一部が反対側に通っていないのでいわゆる薄ニュウというやつでしょうか。また同じく口縁に金繕いが2か所、その他にごく小さな釉剥けのような削げのような部分が3か所ほどありました。見込みに2か所穴がありますが、これは石ハゼの石が取れてしまったもので素地には影響がありませんので疵の範疇に入れなくともいいかと思います。
疵はあってもそれぞれが薬味のような味の一役を買っているようで好ましいもののように見えます。贔屓目ではありますが・・。
御売約ありがとうございます。
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