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『大般若経』は正式名称を『大般若波羅蜜多経』といい、「諸法皆空」を説く大乗仏教初期の重要仏典で、唐時代の玄奘訳で、六百巻からなる。・・もとは奈良、薬師寺が蔵していた『大般若経』・・世に「魚養経」と呼ばれる著名な天平時代の遺品と考えられ、褐色あるいは茶色の麻紙に大ぶりの書で筆記されている。本経の伝承筆者としてあげられる朝野魚養は天平時代後期を代表する名筆として知られるが、本経を筆写したという確証はない。いずれにせよ、肉太の重厚な書風は天平時代後期の堂々たる風格を示し、写経所で制作された当代を代表する遺品である。
上記説明は、出光美術館にて開催された「祈りのかたちー仏教美術入門ー」展(*)の図録から引用させていただきました。
展示されていたものは巻第九十四で、本紙は、巻第一百九十からです。図録をお持ちの方は見比べていただけたらと思います。
表具は、袈裟をほどいたあざやかな黄色の上下に、茶地に金襴と濃い緑の紋様の入る中廻し・風帯で、明るく、かつ重厚な雰囲気です。
時代・伝来の確かなもので、お勧めできるお品です。
太巻 軸:97 x 58 cm 本紙:27.2 x 56.5 cm
*平成二十九年七月二十五日から九月三日 |
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