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巻頭に「泉福寺」の朱印があり、天地に焦げ跡を遺すことから、泉福寺焼経と呼び慣らわされる平安時代の装飾華厳経（六十華厳）です。
今日では作ることができないといわれる漉き染めの藍紙に金界を施し、更に金の揉箔を撒いた料紙に、焦げ跡が華やかさを添えるなか、漆黒の「唐様の勝った謹厳な楷書」（植村和堂氏『古写経』）が映えます。
経文は、金剛幢菩薩十迴向（＊）品（こんごうどうぼさつじゅうえこうほん）「金剛幢菩薩によって、十種の廻向として、菩薩の徹底した利他の精神にもとづく実践が明らかにされる」（『仏教経典選第五巻 華厳経』木村清孝著）からです。
表装は、焼痕と同じ茶の古い高野裂を中廻しに、上下には泉福寺の藍紙と同系のやや濃い緑を使用。草花を染めた紋様が入っていたところを集めて風帯と一文字にしてみました。泉福寺焼経を荘厳するにふさわしい品の良い表装だと思われます。
泉福寺焼経の状態は実に様々です。本紙は、リズミカルな天の焦げ跡と、少しワイルドな地の焦げ跡が見所でしょうか。
太巻 軸：110 X 48 cm
明。令一切衆生解了世間諸對治法。隨應群
生對治衆病。菩薩摩訶薩。施藥善根如是迴
向已。因此善根。令一切衆生捨離諸病。安隱
無患具足清淨。得諸如來無病之法。令一切
衆生出諸病刺得無盡身。金剛圍山所不能
壞。具足堅固一切諸力。成滿諸佛無上法薬。
得佛神力自在法身。是爲菩薩摩訶薩施（湯）
藥時善根迴向。菩薩摩訶薩。悉能惠施（一切）
諸器。所謂以眞金器盛滿雜寶。以白銀（器盛）
滿雜寶。以瑠璃器盛滿雜寶。以頗梨（器盛滿）
雜種寶莊嚴具。以硨磲器盛赤珠寶。以（碼碯）
器盛滿珊瑚夜光衆寶。又以石器盛諸（美膳。）
以栴檀器盛衆寶衣。以金剛器盛滿衆（香。）
如是等無量無數諸妙寶器。盛以無量（無數）
妙寶。或施諸佛。信佛福田不思議故。或（施菩
経文の国訳（『昭和新纂国訳大蔵経』）お付けします。
＊回向
（自分が積んだ善徳を他人に振り向け、共に仏果を得ようとする意）死者のために仏事を営み、冥福を祈ること。『新明解国語辞典』
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