|
大先輩もいらっしゃるこの業界なのであまり偉そうなことは云えませんが、それでもそれなりに長いことやってきている自分も、見かけないものに会うとつい嬉しくなってしまうものです。一見質素でみすぼらしいと見逃してしまいそうですが、意外と出会えないものじゃないでしょうか。
断面が勾玉のようなかたちで、そのへこんだところを腰に当てて使用する、昔のウェストポーチの
ようなものでしょうか。桐材を使用したのは腰に負担が少しでも掛からないような軽い素材だったから。中には道具を入れて使ったのか、あるいは水にぬれてはまずいものを収納するものか、密封できる蓋まで桐材で作っています。
いい具合に煤を被って黒く落ち着いていますね、山仕事をしていた人のお家の囲炉裏端にあったのかと想像しています。蓋の表面はそれほど煤の付着が見られませんが、和紙のようなものが被っていたのかもしれません。
いずれにしてもこのようなものは捨てられ燃やされてしまう運命にあったものでしょうが、数寄な方に取り上げられて今日に残ってきてくれたのでしょう。
民藝的なものの愉しみ方はやはり花器が中心になるかと思いますが、このままでも十分に鑑賞に堪え得る愉しい一品ではないでしょうか。
口径19.5~13.8センチ 高さ16.0センチ
時代ごとの変化の体系的な考察がなされているものではありませんので、時代判定は難しいものでしょうが、江戸~明治大正頃と広い範囲を考えています。
胴の一部が繊維に沿って一度割れてしまったところがあり、そこを接着していました。また底板の端の部分が虫食いで荒れています。粉が出るような脆い感じではありませんし、これ以上虫害が進むこともありません。
置いて使用しても穴に紐を通して掛けて使っても両方愉しめるかと思います。なお蛇足ながら直接水は入れられませんので、花を活ける場合はおとしをご使用ください。
御売約ありがとうございます。 |
|