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蛇足ながら、狛犬とは想像上の動物で、社寺の門前で一対が向き合うかたちで鎮座するもの。正確には獅子と狛犬の組み合わせが正しいのですが、現在一般的には両方とも狛犬と呼ぶことがほとんどです。
屋外に置かれるものは石製がほとんど、まれに陶磁産業の盛んな地域ではやきものや銅製なんかも
あったりしますね。
こちらはどこかの鎮守の神さま、あるいは仏さま(明治以前は神仏混淆ですから同じことかもしれませんが)の祠のなかに脇侍のように祀られていたのでしょう。煤けたところから眼前で御香が絶やされず燻べられていたのでしょう。もともと一対であったとは思いますが、口を大きく開く阿形のみになってしまいました。
しかしほぼ屋外に近い環境に置かれていたものは、虫害や湿気、時には火災などで壊滅的な被害を
被るのが普通でしょう。そう考えると傷みはあるにしてもこんな状態で残ってくれることが有難いところです。
カールした毛の表現、グッと張り出した胸の筋肉など、写実とは違いますがデフォルメされた愛らしさが愉しい狛犬です。上顎が欠損してしまったのですが愛らしい表情にマイナスをあまり感じません。クリッとした眼は無垢な表情で見つめてきてなかなかのキュートさです。
尻尾の別パーツが無くなっていたり、前脚の部分が脆く崩れてしまっていたりと状態がいいわけではありませんが、それでもこの表情は見捨ててはおけませんでした。
仏教美術の厳しい造形のそれも素晴らしいものですが、こんなおどけた表情の一品もまた別の良さがあると思います。
お手許でぜひともかわいがってやってください。
高さ22.6センチ 長さ26.7センチ
江戸時代頃
耳や上顎、脚先など欠損があります。また右前脚は短くなってしまったので、別材を足して長さを揃えています。尻尾は別パーツを据える形ですが無くなっています。あちこちに虫食いで荒れたところがありますが、脆くなって粉が出るというような状態ではありません。
御売約ありがとうございます。 |
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