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我が国の硝子製品の本格稼働(本格の定義はむずかしいのですが、継続して製品を作り出していた
という意味で)は江戸時代であったと思われます。古墳時代の硝子は輸入ものを溶かして再度作ったものですし、正倉院御物の硝子はまったくの舶来製品であったでしょうから。
そんな江戸の硝子は美しいながらも高火度での製作が難しく、溶かしたガラスに鉛などを混入して
融解温度を低くして作ったもので、脆く壊れやすい特徴がありました。
明治に入ってから品川硝子製作所などで外国人の技術者から指導を受けて、もっと堅牢で不純物の少ないものが作れるようになっていきます。とはいえこの頃の硝子は気泡や皺、ゆらゆらとした均一でない質感など、工業製品としてはまだまだ未熟なところが残っていました。
しかしこの未熟であるからこその欠点が、今の硝子製品にはない温かみや面白味を我々にもたらしてくれるのですから、これこそ骨董の妙味というものでしょうか。
長崎辺りで作られた鯉のかたちの硝子の掛花入、なかなか巧みな吹き竿捌きで躍動感のある姿を見事に描写しています。こんな花入を使うところはお堅い場所ではなく、ちょっと艶のあるスペースでしょうね。夏のおもてなしに涼しげな部屋の演出に使われたのでしょう。
リズミカルに付けられた鰭の表現、鋏の入れ方もなかなかの職人技、熱いうちに素早く仕上げなければいけないもので、ゆらゆらの質感も愉しい一品です。
置いても安定しているので料理屋さんの夏のおもてなしの趣向のひとつに、なんて面白いシチュエーションじゃないでしょうか。もちろん硝子を集めておられる方にもお勧めしたと思います。
長さ37.0センチ 高さ15.0センチ
明治時代
尾びれの先端、おそらく小さな欠けがあって手に当たるとあぶないので擦って丸くしているようです。また左胸びれの先端に欠けがあります。
御売約ありがとうございます。 |
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