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江州は滋賀県、琵琶湖の西岸に朽木村はあります。そこでは日常使いの木皿や椀がたくさん作られましたが、それと同時に華やかな漆絵を描いた一群も作られていました。身近な動物や植物、あるいは想像上の霊獣など吉祥の願いが込められた絵付けが為されていたようです。
さて朽木と云えば見込みいっぱいに意匠化された菊花文を描いたものがとても有名ですね。この地を治める大名が参勤交代の折に江戸へ持参し広まったと聞いたことがありましたが、これだけ数が多いのは売り込もうとたくさん作ったからでしょう。
この南天の文様、以前同じ手で柳を描いたものを扱いましたが、なかなかに出てこないものですね。弁柄の赤いベースに黒で描いたバージョンも見たことはありましたが、この黒漆に赤い南天もレアなものでしょう。
南天は難を転ずるとして縁起のいい植物、その願いを込めてハレの日にご馳走を盛って使用したのだと思います。中央やや下寄りにシンプルに一枝をそっと描いていますね。
絵柄の下に漆の剥落がありますが、どうしても致し方ないところかなとも思います。それより火事の被害にも遭わず、虫食いもなく原型を留めて残ってくれたことに感謝しましょう。
うるし絵の豊饒な世界を多くの方に知って頂きたいと思っています。
直径36.5~34.6センチ 高さ3.3~3.8センチ
江戸時代後期頃
漆の剥落、擦れ、経年変化による歪み、反りなどがあります。盆としてお使い頂くのにかたつきなどはありません。
御売約ありがとうございます。
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