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民衆仏の良さは細かいことにこだわらない屈託のなさ、作家の作品のように技巧に凝ったものでなく、あくまでも素朴で微笑ましいところが堪らない魅力じゃないでしょうか。古の庶民の愛した造形は現代の私たちにも強く訴えかけるものがあると思います。
大黒天への信仰は日本全国どこでも見られるもので、その像は数多く残っていると思います。そう云う意味では定番中の定番なんでめずらしいものじゃないかもしれません。しかし幾多の像のなかから好みのお顔を探すとなるとこれがなかなかままならない。技巧の上手な方が探すのに苦労が要らないのかもですね。でも久しぶりに買ったこの像、福々しいご面相に絆されるように手に入れていました。
米俵に乗るお約束のかたち、大きな袋を下げ、右手は小槌を持っていたと思われますが、差し込み式のそれはなくなってしまっています。バルーンスカートのような袴の表現が面白いところ、思いっきり目じりの下がった、優しくニッコリと笑うお顔も魅力的です。
地味な古民藝のジャンルですが、その数寄の伝統は決して絶えることのないもの、それは私たちの心のなかに必ずある郷愁を呼び覚ますものだからじゃないでしょうか。どうぞ座辺でその笑顔をお愉しみください。
高さ20.9センチ 台座の俵の巾9.7センチ
江戸~明治頃 |
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