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塩笥形のお茶碗が人気のある理由、それは手のひらへのフィット感の良さと云うのが大いにあるんではないでしょうか。もともと冬にお茶が冷めにくいと重宝されたものですが、やきもの好きには手になじむお茶碗として季節を問わず人気のあるものです。
縄簾状の陰刻の上に白泥をかぶせて象嵌するいわゆる三嶋手の技法、素朴ですが温雅な膚合いが侘びた茶を呼び、正式なお茶会とはまた別の、数寄の御仁が毎日のように点ててカジュアルに飲むお茶にふさわしい風情です。
塩笥とはもともと厨房の調味料などを入れる小壺として生まれたもの、しかしその多くは口をつけて使うものではもちろんないので、口縁は捻り返しがあり胴が大きく張って口が小さいと云う、茶碗には不向きなものがほとんどです。ですがごくたまに、このような口縁が素直で口をつけて飲めるもので、なおかつ口径が大きいものがあり、数寄者によって見立て茶碗として悦ばれているわけです。たとえば益田鈍翁旧蔵にも有名な塩笥茶碗がありましたね。
高台は素直な土見せ、ねっとりとした土が竹の節に削られどっしりとした印象のものです。際に溜まった釉薬が碧く光ってとてもきれい、焼成がいいのも嬉しいところです。
見込みには轆轤目の渦巻きが廻り、釉薬の掛外しである火間も覘いていますね、お茶碗として
なかなかチャーミングな一品じゃないでしょうか。
ぜひとも座辺の友、愛蔵の茶碗として末永くお付き合い頂きたいと思います。
口径9.6~9.8センチ 胴径11.4センチ 高さ7.7センチ
朝鮮時代前期
味のいい桐箱に収められています。身の縁には黒柿が使われていたり、包布や柱、風呂敷も選ばれたものが使用されていて、愛され、大切に伝えられてきたのがわかりますね。
口縁からニュウが2か所、そのうちのひとつは鳥足状に入り、そこは丁寧に金繕いが施されています。
詳細はお問い合わせください。
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